私自身の恋ができる新作アプリ『囚われのパルマ』の秘密に迫る!
カプコンが約10年ぶりとなる女性向け体感恋愛アドベンチャーゲームを発表!
新作『囚われのパルマ』は、カプコンの女性を中心としたチームが贈る渾身の1本です。
▼ざっくりした内容はこんな感じ
梅原裕一郎主演! カプコンによる体感恋愛アドベンチャー『囚われのパルマ』近日配信
プレイヤーは、孤島の収容所に収監された記憶喪失の青年・ハルトと、面会などをしながら交流を深めていくことになります。
STORY
絶海の孤島に連れて来られたあなたは、ある事件を起こしたとして収容された記憶喪失の青年・ハルトと出会う。
彼の記憶を取り戻すことを条件に、島から出ることを約束されるが、失われた記憶を探っていくうちに彼の持つ不思議な力を知ることになる。 「どうして……君の心は、見えないんだろう」 ふたりが出会ったことで、止まった時間が動き出す―― |
開発陣インタビュー・前編
今回は、週刊ファミ通8月4日発売号でも掲載された開発者インタビューの完全版・前編をお届けします。お話をお伺いしたのは、この方たち。
プロジェクトマネージャー:原 美和 氏(はら みわ/文中は原) チームの全般的なマネジメントを担当。チームの大黒柱的存在。
ディレクター:白鳥有葵 氏(しらとり ゆうき/文中は白鳥) 本作の企画発案者。ゲーム全体のディレクションを担当。シナリオ執筆もしている。
キャラクターデザイン:実田千聖 氏(みた ちさと/文中は実田) 本作のアート全般を担当。テレビアニメ『マクロスΔ』のキャラクター原案も手掛ける。
プロモーションチーム:猪川夏希 氏(いかわ なつき/文中は猪川) 本作のプロモーター。宣伝施策のほか、展開スケジュールのマネジメントを担っている。
パブリシティチーム:阿達由美 氏(あだち ゆみ/文中は阿達) 情報公開スケジュールの管理を担当。各メディアとの窓口として、本作を各方面にPR。
10年ぶりの女性向けタイトル誕生
――まずは、女性メンバー中心のプロジェクトを立ち上げられた経緯をお聞かせください。
白鳥 以前から女性向けのタイトルを作りたいと思っていたところ、偶然にも、当時相談していた女性プロデューサーも女性向け作品をやりたいということで、プロジェクトが立ち上がりました。
――カプコンの女性向けのタイトルは『フルハウスキス2』以来となりますね。
白鳥 そうですね。長いあいだカプコンでこういったタイトルがなかったのですが、草案書を書くにあたって、美青年を描けるデザイナーを探していたところ、当時のプロデューサーが実田を引き込んできてくれたんですよ。そこへ企画チームの女の子が参加して、実際にキャラクターのモデルを作ろうとなった際に、原にも入ってもらいました。
原 私はもともと背景が専門職だったんですけど、ちょうど手が空いていたこともあって。人体モデルを勉強しながらお手伝いを始めました。そんな感じで、流れで集まってきたスタッフが集結したのがいまのチームの原型ですね。
――そこへ、プロモーション企画推進室のおふたりも加わっていったわけですね。
猪川 そうなんです。私は比較的、開発の早い段階でゲーム内容を見ていまして、「すごいゲームを作っているな」と感じました。我々も女性向けゲームをいろいろプレイしていますが「こんなに作り込んでいるゲームはないぞ」と、衝撃を受けたので、後押ししてプロモーションにつなげていきたいなと。
阿達 私たちプロモーション部門は東京にいるのですが、どうやって皆さんにお伝えしていくのがいいのかと、大阪の開発スタッフともいろいろ相談しながら進めていきました。
恋愛FPS!? “ガラス越し”から始まった企画
――作品としての出発点はどのようなところだったのでしょうか?
白鳥 本当に恋愛をしているようなコミュニケーションゲームが作りたかったんです。日常に彼がリンクしたらいいなとも思っていて。企画を練りあげていく中でも、彼との対話に注力しようと。そこから対話範囲の狭まった場所として収容所の設定が生まれました。でも、あまり暗くせず、会話を楽しめる雰囲気にしていますよ。
実田 開発中は、“恋愛FPS”なんていう言葉も生まれましたね。
――選択肢には正誤がなく、”好感度”を気にしなくていいのも斬新ですね。
白鳥 ありがとうございます。彼との会話のやりとりを楽しんでほしいので、そうしています。あんまり正解や間違いを気にせず、自分らしい答えを選んで、ゆっくりと彼との仲が深まる過程を楽しんでいただきたいなと。
――収容所のガラス越しのスキンシップのアイデアは最初から?
白鳥 最初に収容所に決まったのも、ガラス越しのやり取りからです。個室でコミュニケーションを取るシチュエーションって何かないかな、と思ったときに「あ、面会室だ!」と。
――ガラス越しならではの演出もありますよね。おでこをくっつけたりとか。
白鳥 そうですね。液晶画面のガラスを、面会室のガラスそのものに見立てていて。ほかにもエピソードが進むと、ハァーっとやって息で曇らせたりとか、ガラスなのでトントンと叩いたりしてリズムを刻んだりなどといった遊びの部分もあります。
手の平をついている感というのも大事にしています。液晶の画面のガラスを、面会室のガラスそのものに見立てていて。ガラス越しに手の平を重ねると、彼が手のほうをチラッと見たりもします。
原 おでこのときは、ためらわず、ぜひ実際におでこをくっつけていただきたいですね。
――タブレットでぜひ試したいです!
白鳥 ガラスの1歩先に彼が存在している、彼がここにいるんだと感じてもらうために、顔の表情等も作り込んでいます。
ボイスは人気声優の梅原裕一郎さんが担当
――本作は、ハルトの声はフルボイスで、キャストは梅原裕一郎さんが担当されていますが、梅原さんにオファーしたいきさつというのは?
実田 実は、フルボイスにするかどうか、声優さんを起用するかどうかを迷っていました。
白鳥 ボイスは社内スタッフでやろうかという案もあったんですよ。でも、プロモ班の方たちが「やっぱりフルボイスで声優さんでないと」と、強く後押してくれたんです。
猪川 彼と自分とのコミュニケーションがこんなに深いレベルでできるというところがいちばんのウリですし、開発としても作り込みたいポイントということを聞いていたので。そこは絶対ボイスがあるべき、そしてリアリティーを感じられることを強調するべきだと。
後押しした結果もあって、フルボイスでちゃんと演技力のある声優さんを起用頂けたというのは、ありがたいことだったなと思っています。
――梅原さんの声もぴったりですし、演技もすばらしいですよね。
原 ええ。キャストは素の声がイメージに近い方にお願いしようという方針で、ハルトと重なるようなイメージの方を探していました。
実田 梅原さんが出演されていたラジオのお声を聴いて、ハルトをやっていただくならこの方がいいなあと思っていたんです。
白鳥 私もサンプルの声を聴いて、この方だったらハルトのイメージと声がピッタリ合うなと思いました。
――梅原さんご自身も、まさにハルトな雰囲気をお持ちですよね。
猪川 ご本人も「まるで僕がふつうにしゃべってるみたい」とおっしゃっていただけて。うれしいキャスティングですね。梅原さんと相まって、リアリティーという面が強化されているなと思います。
原 梅原さんは本当に人気で、スケジュールが取れたのも奇跡だと言われました。しかも、このゲームはビックリするくらいボイス量が多くて……。
自分たちもこんなに多くなるとは思ってなかったんですけど、ユーザーさんに楽しんでもらえるようにと制作していたら、結果的に大ボリュームになってしまいましたね。実際、ボイス数は梅原さんがこれまで担当された作品の中でも最多だとお聞きしました。
白鳥 スケジュールの方も、皆さんがすごくがんばってくださって。『パルマ』をプレゼンした際に「いままでにない挑戦的な作品だから、こちらもスケジュールを可能な限り押さえる」と言ってくださいました。
――社外の方まで応援団に加わったという感じですね。
白鳥 皆さん協力的で、いろいろと助けてくださいましたね。
魅力的なキャラクター・ハルトができるまで
――ここからはキャラクターデザインについて伺っていきたいと思います。こういったタッチのデザインは乙女ゲームに限らず、珍しい感じがします。
実田 チャレンジでしたね。最初に草案書用に描いた絵は、いまとは全然違って『エクストルーパーズ』みたいな感じなアニメ塗りで。
――実田さんは『エクストルーパーズ』のキャラクターデザインも手掛けられていましたね。
原 実田がキャラデザを担当したのは『エクストルーパーズ』からなので、背景デザイナー歴のほうが長いんですよ。今回の背景も描いています。
――いまの絵画のようなタッチに変わったきっかけというのは?
白鳥 他社さんのタイトルとの差別化というのは意識していました。
実田 白鳥の持っているイメージがシックでスタイリッシュと聞いていたので、それを実現するために絵画っぽく、静かで大人っぽい雰囲気にしようと。
原 かわいらしいだけではなくて、洗練された方向でキャラクターデザインも探っていきました。
白鳥 以前、原が「傘を選ぶときにかわいい柄だけじゃなくて、たまにシックだったり、変わった柄の傘も欲しくなるよね。でも、売っていなかったら買えないよね」と言っていまして。だから、ゲームでもこういう作品があってもいいんじゃないかと。
――確かに、傘は洋服のように何本も持たないですけど、気分によってはいつもと違うのも使ってみたくなります。乙女ゲーム自体も、作風や選択肢の幅が広がるのはうれしいことですよね。
実田 乙女ゲームは私も好きで遊ぶんですけれど、ピンク、フリル、レース、ラメといったモチーフが多いなと思っていて。シックで渋くて大人っぽいものはあまりないようだから、我々が作ろうと。そういう方針で絵を固めていきました。
原 収容所という暗めの設定なので、絵としての華やかさは失わないように、実田ががんばってくれました。
実田 世界設定を踏まえるだけだと重たくなってしまうんですよ。でも、私たちはお客さまにアート面でも癒しをお届けしたい。キービジュアルを描くときは、そういった我々のサービス方針をお客さまに伝えたいと絵作りをしていきました。
白鳥 最初はリアルよりもアニメチックなほうが女性は好むのではないかという意見ももちろん上がってきたんです。でも、このビジュアルを見た女性の方は、皆ハッとして「キレイ」、「かっこいい」といった反応を示してくだって。実田やチームのみんなががんばってくれたおかげかなと思っています。
原 キャラクターモデルも2Dのよさを融合したグラフィックに落とし込んでいます。
実田 イラストっぽさと、実写っぽさのあいだをどう取っていくかというのが、3Dという画材で表現するうえで難しいところでしたね。
原 すごく苦労しました。
実田 顔がすぐ”不気味の谷”(※1)になってしまって。
(※1 姿かたちが実際の人間に近づくほど親しみが沸いていくのに、”人間そのもの”の手前の段階でどこか違和感や気味の悪さを強く感じる現象)
原 2Dのよさと3Dのよさは違いますし、作りかたも違うんですが、それのいいとこ取りをしたいと。そこも挑戦でした。でも、結果的には面会でハルトがすごく繊細な動きをしてくれるようになりました。
――本当に滑らかに動きますよね。
実田 Live2D(※2)などの技術も検討したんですけど、白鳥の目指すところとしては、もっと奥行きと動きがほしいということで。親しくなったら、ハルトにグワッとこちらに近づいてきてほしいと。
その動きをLive2Dで検証したら、すごく難しいと感じまして。というのも、テクスチャの荒れについ目が行ってしまって、ハルトとのコミュニケーションに集中できないなあと。そこでポリゴンモデルでやろうとなりました。
(※2 平面の絵を動かして立体的な表現をする技術)
ハルトの舌の動きまで再現!
原 白鳥からは「モデルには舌にも関節が欲しい」ということで、実装しているんですよ。
――舌に関節ですか!?
白鳥 舌も動くんですよ。緊張したときとか、唇を舐めたりしますよね。それに舌が動くと色っぽく見えますし。
原 あとは”てへぺろ”であったりとか。面会毎に舌が動くシーンが入っているわけではないんですけど。
実田 実際にちょっと唇を舐めるシーンもありますよ。
原 やりすぎると品がなくなるので、そこは気を付けています。ハルトの骨のジョイント数とか、ポリゴン数もなかなかハイエンド寄りの作りになっています。
実田 私たちも最初は「本当に舌動かしちゃうの!?」って思っていましたが、全力投入しました。コミュニケーションを取るときに必要な表情を表現するために、ハイエンド機ぐらいの“ボーン”は入っています。
――それだけ細かいと、動きを付けるのもたいへんだったのでは?
原 モーションはほとんど“手つけ”(※3)なんです。いわゆるモーションキャプチャーで、フェイシャルをキャプチャーして、リアルな人間の動きにしてしまうと、変なリアル感が出てしまうので……。
(※3 手作業で動きを決めていくこと)
実田 デザインが実写とファンタジーのあいだを取っていることもあって、動きにも夢がほしいというのがありまして。たとえば、年配の男性でフェイシャルモーションを撮って使うと、おっさんがしゃべっている感が出てしまうんです。
原 リアルさもそうなんですけど、萌えられるかというバランスがすごく難しかったところですね。
――作るうえで参考にされたタイトルや、ほかのチームの方からアドバイスされたところなどはありますか?
原 技術的にも助けてくださる方がいっぱいいて、それを聞いては試しというのをくり返していきました。カプコンは職人タイプのスタッフが多いので、『パルマ』を見ていただくと、鋭い突っ込みや意見をくださいまして。
――カプコンの作品ですと、近年の『逆転裁判』シリーズは3Dと2Dを融合させた絵作りになっていますよね。
実田 そうですね。『大逆転裁判』のモデル担当の方がチームに来てくれたらいいのにと熱望していたら、本当に来てくださることになって。
原 亜双義などを作っていたモデラーの方がハルトを仕上げてくれたんです。
実田 3Dモデルでデフォルメをしていて、しかも新規のタイトルで、これまで誰も見たことがないラインを探るというのは難度の高い作業です。それに、私が自分でわからなかった特徴をその方が引き出してくださいました。
猪川 キャラクターが3Dで作られていることで、表情や指先の動きひとつひとつがこんなに自分のプレイ感覚に意味を与えるのかとすごい衝撃を受けました。
私はユーザーとしてもいちばん乗りくらいのタイミングでプレイしているのですが、そのときは誰かに見られていないか気になるんですよ(笑)。すごく照れながらプレイしているので……。
会社でのチェックプレイは周りの気配を伺いつつだから「早く発売されないかな、自分の部屋でひとりで楽しみたいな」と思っています。そういう想いをより多くのユーザーさんにも体感していただきたいです。
インタビューは後編(8月9日公開予定)へ続きます! 次回は、画期的な恋愛システムにクローズアップ!!
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梅原裕一郎主演『囚われのパルマ』が期待せざるを得ない理由(後編)